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2016/08/22

IT化は自動車整備工場を救えるか?

この記事のポイント
  • ❶自動車産業は日進月歩でIT化している
  • ❷その流れに取り残される整備工場
  • ❸整備工場のIT化は産業全体の課題に

センサーで不具合を発見する自己診断機能をはじめ、自動車のIT化はめざましい速度で進んでいます。しかし、自動車産業全体を見渡してみると、まだIT化が手つかずの領域も残っているのが現状です。なかでも、特に遅れている整備工場について、その弊害と課題を整理しました。

自動車自体のIT化は急速に進んでいる。

メーターパネルの警告灯がなんの前触れもなく点灯し、突然車が動かなくなってしまう──。ひと昔前には珍しくもなかったトラブルは、自動車がIT化され、自己診断機能が搭載されたことで、そのほとんどを未然に防げるようになりました。今となってはインターネットと接続し、地図や渋滞情報をリアルタイムで受け取ることも当たり前です。障害物を察知して自動で減速する衝突回軽減ブレーキや、一定の車間距離を保った走行をサポートする前車追従機能など、運転自体をサポートする機能を備えた車も増えています。

整備工場のIT化の遅れはディーラーにとっても死活問題。

しかしながら、自動車産業のあらゆる領域でIT化が進んでいるわけではありません。とりわけ遅れを取っているのが整備の領域です。各メーカーが、自社の自動車に用いられるパーツなどの情報開示を避けてきたことで、いまだにIT導入による効率化が進んでいない現状があります。

現在は、ディーラーが診断機を導入し、自動車と接続するだけで車両のトラブルをある程度検知することも可能になってきていますが、その診断機が使用できるのも基本的にはディーラーと同じ系列のメーカーで作られた自動車のみ。いわば、メーカーごとの囲い込みが発生しています。

しかし、ディーラーが自動車の整備をすべて担えるかというと、それは不可能です。日本最大のディーラー網を有するトヨタ自動車ですら、拠点数は5000程度。これでは全国津々浦々に均一なサービスを提供できません。新車への買い替えサイクルが長くなり、整備の需要は年々高まる一方、それに対応するべき自動車整備工場がこのままIT化に対応できなければ、ディーラーのサービス自体が立ち行かなくなることは火を見るよりも明らかです。

メーカーの垣根を超えたIT化が必須。

自動車産業の未来を考えると、整備工場のIT化は急務です。自動診断機の導入に積極的な工場に対して、国土交通省が補助金を出すようになったのも、そうした危機感があるからでしょう。

現在、増加する整備需要への対応に際して最大のボトルネックとなっているのは、自動車の各パーツのデータ管理です。自動車1台を構成するパーツは、2〜3万点にも及びます。それらは年式やグレードによっても品番が異なるため、パーツリストだけで膨大なデータ量となります。しかも、多くの場合でパーツリストはメーカーごとに作られており、その管理は非常に煩雑です。あらゆるメーカーのパーツを一括管理できるソフトウェアがあれば、負担は大幅に軽減できるでしょう。

自動車のIT化は着実に進んでいるものの、そのスピードはいまだに遅々としています。しかし見方を変えれば、IT化による発展の余地がまだまだ残されているということでもあります。メーカーの垣根を超えたIT化は、まさにそうした可能性に着目したアプローチなのです。

※本記事は2020年12月に再編集・修正しました。
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