データ活用の波が、中古自動車市場を変革する
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❶中古車の個人間売買が話題に
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❷異業種も注目する自動車市場
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❸課題は車両情報の一元化
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車検や整備業務にも力を注ぎ始めた自動車ディーラー。レンタカー事業に参入する自動車整備工場。海外ではオンライン販売に移行したメーカーが出現するなど、自動車業界は変革期を迎えています。そして今や、自動車の購入方法さえも大きく変わろうとしているのです。
中古車販売は、B to CからC to Cへ。
日本の自動車市場のうち、新車の年間販売台数はおよそ526万台(※1)。一方、中古車の年間登録(販売)台数はおよそ696万台と、新車を上回る需要をみせています(※1)。
中古車市場の大半を占めているのが、中古車ディーラーによる販売(B to C)です。しかし近年は、雑貨や衣料を気軽に売り買いできるフリマアプリが普及し、中古車も直接売買する個人間取引(C to C)に大きな注目が集まっています。
C to Cは、原則として消費税がかかりません。また、売り手と買い手が直接取引を行うため中間コストが不要になり、ディーラーを介した取引よりも安価なため、年々需要が高まっています。
こうしたニーズを受け、業界に先駆けて動き出したのが中古車販売「ガリバー」を展開する株式会社IDOMです。同社が運営する「ガリバーフリマ」では、インターネットや連携アプリを通して匿名で取り引きでき、名義変更などの手続きや輸送もすべて同社が代行。その利便性と安心感で人気です。
「オートバックス」を展開する株式会社オートバックスセブンも、2020年4月から個人売買の仲介サービスに参入することを発表。中古車のC to Cは、自動車業界でも注目を集めています。
車両情報の「見える化」が、C to Cを加速させる。
しかし、日本の中古車市場でC to Cの比率はわずか6%(※2)。アメリカの29%、イギリスの42%と比べても、まだまだ普及しているとはいえません(※2)。その要因は、どこにあるのでしょうか?
最も大きな要因は、情報の不透明性です。たとえば欧米では、過去のオーナー数や事故・水害・整備履歴、走行距離など、見た目だけでは把握できない情報を有料で提供する民間のトレーサビリティーサービスが多数存在しています。
一方、日本では、国土交通省と軽自動車検査協会が自動車検査登録制度に基づき、車種や所有者などの基本情報を管理しています。しかし、整備や修理などの履歴情報は整備工場ごとに管理体制が異なるため、一元化されていません。そのため、車両の品質や安全性が不透明になり、買い手の不安も高まります。中古車ディーラーで販売されている車でさえも、査定のほとんどが目視程度で、事故や水害といった過去の履歴を把握できていないのが現状です。
日本でも自動車メーカーやディーラー、整備工場などが保持している整備情報を統合し、共有できれば、買い手に信頼性の高い情報を提供できるようになります。それはC to Cを加速させるだけでなく、中古車市場、自動車市場全体をも活性化してくれることでしょう。
スーパーやコンビニでも、クルマが買える時代に。
今後は「自動車はディーラーで買うもの」という常識自体が変わるかもしれません。スーパーやコンビニエンスストアといった異業種の大企業が、真剣に自動車販売への参入を検討し始めているからです。大手スーパーが中古車ディーラーを誘致すれば、業界は大きなインパクトを受けることになるでしょう。そこでも課題になるのは、いかに信頼性の高い情報を提供し、買い手の信用を得るかということ。そのためにも、車両情報を「見える化」するツールの存在は必要不可欠です。
私たちテックファームホールディングスの技術力と、自動車業界のプロフェッショナルである株式会社EBEのノウハウを結集すれば、車両情報をはじめ自動車業界がこれまで蓄積してきたあらゆるデータを一元化するツールの開発も夢ではありません。マーケットのIT化をさらに押し進めることで、自動車業界の発展に貢献していきたいと考えています。
※2 国土交通省「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン」
※本記事は2020年12月に再編集・修正しました。