産業用ドローンが日本の未来を切り拓く
- この記事のポイント
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❶産業用ドローンの利用者数が増大
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❷人手不足やリスク回避に貢献
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❸航空法の改定で、ドローンが身近に
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近年、テレビ番組などでドローンが撮影する大迫力の映像を目にする機会が増えました。しかしながら、日常生活の中でドローンを見かける機会は多くはありません。現在ドローンはどのような場所で活躍し、今後どのように私たちの暮らしに関わってくるのでしょうか。
軍事用から民間用へと進化。
ドローンは、第二次世界大戦中にアメリカで軍事用に開発された、3つ以上の回転翼を搭載するマルチコプター型の無人飛行機です。プロペラ音が雄バチ(drone)の羽音に似ていることからそう名付けられました。
ドローンが民間に普及したきっかけは、2010年にフランスのParrot社が発売したカメラ搭載型ドローンです。スマートフォンで操作できる手軽さが注目を集め、その後たくさんの企業がドローン市場に参入。その中でも、中国のドローンメーカー「DJI」は使い勝手の向上と低コスト化を実現。今日では市場の7割を占めるまでに成長しています。
世界4大会計事務所としても名高いコンサルティング会社「PwC」のレポートによると、今後ドローンを活用したサービスの市場規模は約1,273億ドルに達すると予測されています(※1)。
自立制御機能で、誰でも操縦が可能に。
ラジコン飛行機とドローンには、どのような違いがあるのでしょうか。ラジコン飛行機は「プロポ」と呼ばれるコントローラーを使って手動で操作します。安定して飛行させるには、操縦者のテクニックが欠かせません。
一方、ドローンにはGPSや加速度センサー、ジャイロセンサーなどが搭載されています。集めたデータを解析して現在の位置や姿勢を正確に把握し、その情報をもとに飛行速度や方向、高度、姿勢などを自動的に調整することで、安定飛行をかなえます。どんなに重い荷物を運んでいても同様です。こうした自律制御機能を備えているため、操縦に高度なテクニックはいりません。実際、日本では、ドローンの運転免許証のようなものは存在しません。
近年では、安全性と操作性はさらに向上。操縦者の自動追尾や、建物や他の機体などへの衝突防止、指定された経路や目的地への自動飛行などの機能も搭載され始めています。
市場を牽引する産業用ドローン。
ドローン開発が進んだ結果、1万円前後で購入できる個人用のトイドローンや水中用ドローンなど、さまざまなジャンルの機体が登場しました。そして今後、最も利用者の拡大が見込まれているのが、産業用ドローンです。
産業用ドローンの価格帯は100万円から1,000万円と、トイドローンに比べると高額ですが、その分きわめて高い性能を誇ります。回転翼を増やすことで安定した飛行を実現している他、高解像度のカメラや、カメラのブレを軽減する高性能なジンバルも搭載。悪天候や過酷な環境下でも飛行できる耐久性も備えています。
日本や世界で広がる活躍の場。
産業用ドローンは、人手不足の分野を救う役割を担っています。たとえば、橋や送電設備といった社会インフラの老朽化を防ぐためには、これまで専門的な鑑識眼を持つ人が現地に赴き、点検する必要がありました。しかしカメラを備えたドローンがあれば、遠隔地からでも効率良く点検ができるようになります。
また、農業分野でも、ドローンが作物の発育状況や健康状態を把握することで、肥料や殺虫剤、除草剤を必要な場所に、必要な量だけ散布できます。PwCの調査によると、ドローンのサービス市場のうち、452億ドルをインフラやプラントの点検など社会基盤の維持、324億ドルを農業分野が占めると予測しています(※2)。
人が入り込めない危険なエリアや、災害地でもドローンは活躍します。実際に福島第一原発では、放射線量が高い原子炉建屋内部の様子を把握する際に、カメラと線量計を搭載したドローンを活用しています。アフリカのルワンダでは、ドローンで輸血用血液を医療機関に配送する仕組みが実用化されており、到着までの時間はたった20〜30分。長期保存が難しい医薬品や輸血用血液を各病院で備蓄することなく、集中管理拠点からすぐにドローンで配達できる体制が、世界に先駆けてアフリカで実現しています。
ドローンのルールを定める航空法。
日本では無条件にドローンを飛ばせるわけではありません。2015年に航空法が改正され、重さ200g以上のドローンに対する飛行禁止区域や飛行ルールなどが規定されました。飛行区域は原則150m未満の空域。空港周辺など航空機の安全に影響を及ぼす可能性がある空域や、人や家屋が密集している地域の飛行は禁止されています。飛行させるには、事前に国土交通省への手続きや許可取りが必要です。
たとえ重さが200g未満のドローンであっても、都道府県や市町村の条例によって公園や公共施設内での飛行を禁止している場合があるため、事前に自治体への確認が必要になります。
また、飛行ルールとして目視の範囲内を越える飛行は認められていません。この他にも、人やモノとの空間を30cm以上離す必要があることや、夜間やイベント会場での飛行の禁止、危険物の輸送・配達物の投下などが禁止されています。
普及のカギは「レベル4」の実現。
航空法の中でも、産業用ドローンの普及に大きく関わってくるのが、有人での目視外飛行、通称「レベル4」です。「レベル4」が実現できれば、人口の多い場所でも目視外飛行が可能となり、物流や警備の強化、災害救助や避難誘導、消火活動の支援、都市部のインフラ点検などに活用できるようになります。
政府も「レベル4」実現に向けて動き始めています。2021年度からドローンの所有者に機体の登録を義務付ける方針を発表。テロやスパイなどの不正利用を防止した上で「レベル4」を実装し、2022年度からはドローンを使用した宅配サービスなどの商用化を目指しています。
未来に向けたプラットフォームの構築を。
今後、ますます利用拡大が見込まれる産業用ドローン。このとき必要になってくるのが、産業用ドローンに最適なIoTシステムです。産業用ドローンには、カメラやセンサーで取得した画像や数値情報などの膨大なデータをクラウドに蓄積し、解析するシステムが必要になります。その上、ドローン関連に利用されているソフトウェアはアメリカ製が多いため、日本で利用するにはさまざまなカスタマイズが必要です。
そこで活躍できるのが、テックファームが提供する『MoL(モル)』です。IoTシステムの構築と運用/管理を支援するプラットフォームで、ユーザーやデバイスの管理から通信方式への対応まで、日本固有の利用シーンやニーズに合わせて構築しています。既存システムとの連携や企業固有のニーズに沿ったカスタマイズにも対応。拡張性にも優れています。
産業用ドローンのさらなる飛躍に、テックファームも『MoL』を通じて貢献してまいります。
※1 2016年5月9日PwC調べ(英語)
“Global Market for Commercial Applications of Drone Technology Valued at over $127 bn”
※PwCコンサルティング合同会社の2017年1月12日付プレスリリース
『PwCコンサルティング、「ドローン・パワード・ソリューション」を提供開始』より
https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/drone-powered-solutions170112.html
※2 PwCのレポート「Clarity from above」
https://www.pwc.pl/clarityfromabove
<テックファームのIoTソリューションご紹介>
IoTプラットフォーム『MoL』:https://www.techfirm.co.jp/product/mol/