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2019/04/16

インド発のスタートアップが、医療に革命を起こす

この記事のポイント
  • ❶AIがわずか6秒で心臓発作を発見
  • ❷医師不足に悩むあらゆる国で応用できる
  • ❸CEOは博士号を持つ心臓専門医

シリコンバレー、ロンドンに次ぐスタートアップ拠点と目されるインド南部の都市、バンガロール。数あるスタートアップのなかで、注目株の筆頭に挙げられているヘルステック企業が「Tricog」です。同社が提供する診断支援ツール「Insta ECG」がもたらす社会的インパクトに迫ります。

目指すのは、心臓発作からの生還率80パーセント。

2011年創業のTricog社は、約2年間で200万人以上の医師から診断付きの心電図(ECC)データを収集したインドのスタートアップ企業。創業者であるCharit Bhograj氏は心臓を専門とする医学博士でもあり、臨床医として長年に渡り心血管疾患の治療に携わってきました。そんな氏が開発したのが、心血管疾患の診断をAI技術でサポートする「Insta ECG」です。

Tricog社CEO・Charit Bhograj氏(Tricog社Webサイトより)

インドでは、1990年から2017年にかけて心臓発作などの心血管疾患で亡くなる人の割合が大幅に増加しました(※1)。2014年には約500万人が心臓発作に見舞われ、そのうちの300万人が亡くなったとされています。発症から2時間以内に治療を行えば、約80%が生還するといわれる心臓発作。インドではなぜここまで死亡率が高かったのでしょう。

その一因となっているのが、深刻な医師不足です。インドの人口1000人あたりの医師の数は約0.8人(※2)。OECD加盟国の平均となる2.9人を大きく下回ります(※3)。さらにCharit氏は、「多くの病院が心臓発作の診断に欠かせないEGG(心電図)マシンを備えておらず、それを問題なく使用できる医師も不足している」と指摘。診断時間が長引くことで治療が遅れ、それが高い死亡率へとつながっていました。

いかに診断時間を減らし、2時間以内の治療を実現するか。心臓発作の生還率を80%まで高め、数万人の命を救うことをミッションとして開発されたのが、この「Insta ECG」です。

Tricog - Taking an ECG(youtube)

わずか6秒で、心臓発作を発見。

Insta ECGの取り扱いは、極めて簡単です。胸部に貼付けた5〜6カ所のセンサーが心臓の活動データを取得すると、即座にクラウド上のデータベースにアクセス。AIが膨大な過去の心電図データと照合し、緊急処置を要する心血管疾患なのかどうかを6秒以内に判断します。限られた時間のなかで、正確に診断しなければならない医師にとって、この上ない味方です。

Insta ECGはすでにインドだけでなく、ケニア、タイ、インドネシアの医療機関にも導入済みです。延べ1,300以上の施設で、150万人以上を診断し、2万件以上の心臓発作を発見してきました。さまざまな人種、年齢、性別、体質、生活習慣を持つ患者のデータを蓄積することで、診断精度はさらに高まっています。

医師不足に悩む日本にも、Insta ECGを。

医師不足はインドだけでなく、日本にとっても大きな課題です。日本の人口1000人あたりの医師の数は、約2.4人(※3)と、先進国では最低レベル。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降は、医師不足がさらに深刻化するとの予測もあります。

Tricog Insta ECG(youtube)

Insta ECGの導入は、こうした日本の状況にも有効な処方箋となるはずです。クリアすべき法的な課題もありますが、Insta ECG自体は医療行為ではなく、あくまでも医師の診断をサポートするソリューションのため、超えるべきハードルは決して高くはありません。

Tricogは、テックファームホールディングスが業務提携を結ぶインドのベンチャーキャピタル、インヴェンタスの投資先のひとつです。私たちもさまざまな形で連携を模索しながら、さらなる成長を後押ししてまいります。

※1 Institute of Health Metrics and Evaluation 「Global Burden of Disease Study」 (2017)
※2 BMI Research 「Worldwide Medical Devices Market Factbook」(2019)
※3 OECD Health Statistics 2016
※本記事は2020年12月に再編集・修正しました。
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